文化的景観と伝統的建造物群。選定と保存・活用についてザクッと学ぼう!


さて、重要伝統的建造物群保存地区(通称:伝建)と重要文化的景観の制度についてです。

伝建は宿場町や城下町などの「街並み」を文化財として選定するもので、文化的景観は「人々の生活や生業を理解する上で不可欠な景観地」です。

あまり聞きなれないかもしれませんが、この2つもれっきとした文化財です。ここからは、伝建と文化的景観が他の類型とどのように違うのか、そしてどのように保存と活用が図られているのかについてみていくこととします。j

他の文化財類型とは異なる2類型。

この2つの制度は、他の文化財と多少毛色が異なります。まず面的な文化財であること。

有形文化財や無形文化財は、「これ・この人を指定します!」と基本的に単体に対して行うものです。これに対し、伝建と重要文化的景観は、特定地域一帯の保護を目的に選定されるものです。「地域一帯が文化財です」と言われてもピンと来ないかもしれませんが、地域一帯ということがこの2つの類型にとって大きな特徴になります。

 

また、伝建と重要文化的景観以外の文化財については、地方からの推薦を受け付けず、あくまで国が調査を行い、全国的な見地から見て重要なものを一方的に指定する形を取っています。

これに対し、伝建と文化的景観は自治体の意思が重要になります。文化的景観であれば、都道府県や市町村の申出に基づいて国が選定することで「重要文化的景観」になります。伝建であれば、市町村が「伝統的建造物群保存地区」に関する条例を作って保存の方針などを定めた後、国に対して申出を行うことで「重要伝統的建造物群保存地区」に選定される道が開けます。

重要伝統的建造物群の保存と活用

まずはざっと重伝建地区になるためのプロセスについて説明させていただき、次いで重伝建地区の保存・活用がどのように図られているのかを説明する流れにします。

 

重要伝統的建造物群保存地区になるには?

まず、重伝建地区になるためにはどうすれば良いのか解説します。

他の文化財と同様に、まずは調査が必要です。文化財としての価値を見極める必要があるからです。そして地域をどのように保存していくのかなどを定める保存条例を自治体が制定することが必要です。制定した保存条例に従って、今度は保存の計画を定めます。何が中心的な建造物なのか(伝統的建造物)、整備をどうするのか等々、様々な観点から持続的に保存していくための計画を作るわけです。

こうして市町村で伝建地区を定め、さらに市町村が国に申し出を行って国として価値が高いと認められた場合に、やっと重伝建地区になります。この部分については、他の類型との違いで触れた通りです。

 

重伝建地区の保存と活用

伝建地域内には、特にその伝建のシンボルとなるような中心的な建物があります。これを伝統的建造物と言います。この伝統的建造物については、文化財建造物としての価値を維持するように、修理の際の補助が行われます。

また、伝統的建造物以外の新築や修理についても、周囲の伝統的建造物と調和するように工事をしなければなりません。景観を重視する文化財類型ですので、街並みを綺麗にしておく必要があるんですね。これを「修景」と言います。

 

また、文化財建造物全体でも同様のことが言える場合が多いのですが、古い建物の多くは木造です。そのため、火に弱いという弱点があります。特に伝建は木造建造物の集合体。もし火事や地震が起きれば、他の地域以上に甚大な被害が出る恐れがあります。

こうしたことから、伝建地区内では、防災施設の整備も行われます。例えば防火水槽や自動火災報知器の整備です。

さらに、伝統的建造物を資料の展示館にしたり、住民や観光客との交流スペースにするなど、管理施設の整備も行われています。

 

伝建地区はまちそのものが文化財ということで、住民の生活空間でもあります。こうしたことから、住民の理解と協力がなければ良好な状態を維持していくことはなかなか難しいです。建築関係者や観光関係者、住民などが協力しあっているからこそ続いている制度であると言えるでしょう。

なお、伝建地区では建物の内装を変えるなどして観光向けの施設も作りやすいです。重要文化財建造物に比べて自由度が高い制度ですね。

重要文化的景観の保存と活用

次は重要文化的景観です。これは文化財類型の中で最も新しく、平成16年の文化財保護法改正によって誕生しました。ですからまだその歴史は13年。この間、50以上が選定されています。

この文化的景観は、人間の営みと景観がセットになっている点で、他の類型とは大きく異なります。

 

重要文化的景観になるには?

重要文化的景観は、様々な景観地のうち日本国民の基盤的生活や生業の特色を示すもので典型的なもの又は独特なものが選定されます。棚田や里山などがわかりやすいですね。選定されたものの一例としては、四万十川の景観や姨捨の棚田などが挙げられます。

基本的には伝建と同様で、保存の計画策定や条例制定を経た上で文化的景観として決定され、市町村の国への申出により重要文化的景観としてふさわしいかどうかの審査が行われます。

 

重要文化的景観の保存と活用

文化的景観の現状を変更するような場合には、原則として国に届け出ることになっています。この点、重要文化財の許可制とは異なります。

重要文化的景観への選定を目指すにあたって、調査や保存計画の策定が必要となりますが、これらを行うにあたり国から経費が補助されることになります。

また、重要文化的景観に選定されると、国からの補助によって修理・修景を行ったり、案内板の作成などの整備を行うことが可能です。さらに、パンフレットの作成や普及啓発のためのワークショップを行う際にも補助がなされます。

なお、固定資産税の優遇など税制上の措置も講じられています。

 


 

伝建と文化的景観は、世間一般には文化財として知られていないように思います。

他方で、昨今のインバウンド加速などにより、観光資源としての活用にも適した類型であると言われているように思います。特に伝建については、日本昔ながらの建造物でショッピングを楽しんだり、宿泊やレストランとしての活用もやりやすいものです。

文化財の観光拠点としての整備の必要性について指摘されることも少なくありませんが、伝建と文化的景観はもともと面的な文化財ですので、いわゆる拠点的なイメージにも合致しやすいものと考えています。

 

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民俗文化財って何?どう保護されているの?を優しく解説。


次は、民俗文化財について多少詳しく解説します。

民俗といえば、お祭りとかお祭りの用具とか、鵜飼とか、なまはげとか。「それって文化財なんだ?」って思う方も多い分野だと思います。駅の観光用ポスターなんかを見ると「国指定重要無形民俗文化財」なんて言葉が書かれていることが多いですので、今度注意してみてみてください。

民俗文化財そのものを少し詳しく。

まずはおさらいがてら。民俗文化財ですが、「民族」ではなく「民俗」です。

で「民俗」って何さ?という話になると思うんですが、「地域に根ざした衣食住・生業・信仰・年中行事等に関する風俗慣習、民俗芸能、民俗技術及びこれらに用いられる衣服、器具、家屋、その他の物件など、人々が日常生活の中で想像し、継承してきた国民の生活の推移を理解する上で欠かせないもの」です。

簡単にいうと、「人々の暮らしぶりに関するもの」となります。

 

これらのうちで国として特に重要・価値が高いと認めたものが重要有形民俗文化財と重要無形文化財です。有形民俗には、無形民俗で用いられる衣服・器具・家具なんかが該当します。

最近では、昨年ユネスコ無形文化遺産にも記載された山・鉾・屋台行事なんかがわかりやすいですね。いわゆる山車祭りです。

 

29年4月現在、重要有形民俗文化財は220、重要無形民俗文化財は303あります。有形・無形共にたくさんの種類に分かれていますが、無形は分野としては3つ。風俗慣習、民俗芸能、民俗技術です。

民俗文化財保護はどう行われている?

まずは有形への支援から。

有形というくらいですから、有形民俗文化財は形あるものです。そうすると、そのものをいかに維持していくかということに焦点が当たります。ですから、その「モノ」自体を保存・継承するため、道具の修理などに国からの補助が出ています。

また、防災設備の整備や、保存施設・展示施設の整備、管理費用などにも補助が出ます。補助率は対象経費の2分の1です。

 

次に無形への支援。

無形の民俗文化財は、形がありません。そうなると伝承・活用への支援というように、有形とは異なる支援の枠組みになってきます。例えば伝承者の要請や現地公開の費用がそれにあたります。

ただし、重要無形民俗文化財を続けて行くために必要な用具の修理・身長や施設の修理・防災にも支援がなされます。これも補助率は補助対象経費の2分の1です。

また、無形であるという特色から、記録作成も行います。民俗は生活ですから、その形が変化していくことも当然にあり得るわけです。そんな中で、「今ある形」を後世に伝えるためには、その状態を記録しておく必要がありますよね。ですから映像なんかに残しておくわけです。

 

このように、民俗文化財の保存・活用のために国が指定し、そして指定したものについて補助金を出すというのが今のところの保護の枠組みです。


最後に一つだけ。ここで例としてあげたお祭りやなまはげ等は、民俗文化財の中でも派手なものです。

実際の民俗文化財の中には、「え?これが文化財なの?」という見た目が地味なものもあります。この文化財類型は、芸術的な素晴らしさではなく、人々がどう生きてきたかを知るためのものですから、そのような「歴史・変遷を知る」上で重要なものは、民俗文化財として価値あるものなんです。

 

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