白銅の地ザンスカール:厳しさと優しさ、そして地上の果て


ラダックからさらにバスやジープで2日。日本からだと最低4日はかかる、最果ての地ザンスカール。
カルギルからでも12時間かかるこの地は、ラダック地域がかなり観光化されているのに比べて、昔ながらの暮らしが色濃く残っています。

 

 ザンスカールの過ごし方



悠々と歩く牛やヤク、道端でたたずむ靴磨きのおじさんや僧侶、朝早くから麦をいるおばちゃん。ザンスカール地域の中心と言われるパドゥムでさえ、日本で言えば限界集落そのもの。忙しく働くなんてことは決してなく、昔ながらのゆったりとしたペースで暮らしています。

 

この地域には、プクタルやカルシャ、ストンデといった著名なゴンパ、旧王宮ザンラなどの見所が点在しています。ザンスカールがラダックと比べても著しく田舎であるにもかかわらず、ゴンパは荘厳です。パドゥムゴンパからは15キロ以上離れたカルシャのゴンパまで見渡すことができます。

ほとんど雨が降らない乾いた土地の極度に乾燥した山肌に打ち付けられたかのように立つカルシャゴンパは、まさにイメージするゴンパの姿そのものです。
フンザの谷とこれらのゴンパを合わせたら天空の城になるのではないか。。。と思える風貌です。不規則で、一見無造作に建てられた可能ように見えるゴンパは、その無造作さ故に、かえって神聖さを際立たせているようです。

 

こうした見所も数多く存在するザンスカールですが、この地域の何よりの魅力はその地域で普通に暮らしている人々の姿そのものです。もちろん、文明化の波はこの地域にも訪れていて、パソコンで洋画の吹き替え(!!)を見ていたりします。
主要な道路は、コンクリートで舗装されているところもあります。それでも、農業・畜産を中心とした人々の暮らしぶりは昔とそれほど変わっていないのではないかと思えます。

朝、早起きして散歩してみましょう。晩秋の道端では、麦を大きな鍋で炒るおばちゃんの姿が。図々しくも近づいていくと、笑顔で「ティー?」と迎え入れてくれます。
山頂から光芒を煌めかせながら登る太陽にかぶさるように、炒った麦から煙が立ち上ります。冷たい空気と立ちこめる香ばしい香りには、なかなか立ち会うことができないでしょう。

 

私が訪れた時期がシーズンオフだったせいもあってか、カルシャでもストンデでも、お坊さんが親切に案内してくれました。お昼時だったこともあり、両僧院で、お坊さんたちと一緒にランチも。そのあとは案内してくれたお坊さんの部屋でチャイをご馳走になりました。
海外に旅に出るようになった初めの頃は、有名な遺跡などを訪れるものだと思っていましたが、今となっては、こうした現地で普通に暮らしている方々と話をしたり、親切にしてもらったことが、何よりも嬉しく、記憶に残ります。

 

 ザンスカールの旅情報



ラダック・ザンスカールトラベルガイドには、比較的高めのホテルが載っていますが、現地にはゲストハウスがいくつもあるので、シーズン真っ盛りでなければ、それほど心配しなくても大丈夫です。
パドゥムで出会ったイタリア人は、現地の人の家にホームステイしていると言っていました。ホームステイも難しくないそうです。次回チャンスがあれば、ぜひローカルな人の家にホームステイしてみたいものです。

ただ、ここからトレックに出かける場合には、事前に予約をしておいた方が良いようです。シーズンオフの時期は農作業の時期と重なり、どこも男手が足りなくなっています。ですので、なかなかガイドなどを探すのも難しくなるのです。

 

現在、パドゥムからカルシャやストンデ、ザンラなどへのバスは出ていません。昔は存在したようですが、当然ながら赤字となり、今はバスの代わりにシェアタクシーが公共交通の役割を担っているようです。この点はラダックザンスカールトラベルガイドとは異なります。

そんなわけで、毎日16時頃発、翌日の朝8時頃にパドゥムに戻るシェアタクシーが、唯一の公共交通手段となります。自分で1台チャーターするのに比べ、かなり安上がりに済ませることができます。100〜150ルピー程度でザンラやストンデまで行けます。

このシェアタクシーやチャーターを除くと、移動手段は徒歩くらいになってしまうのですが、運が良ければ歩いている途中に車で拾ってもらえます。期待のしすぎは禁物ですが、自分は何度も歩いている最中に声をかけてもらいました。

 

 カルギルからパドゥムへの移動


カルギル→パドゥムへのバスは1週間に1度程度。
シェアタクシーの相場は1000ルピーから1500ルピー。運次第なので、1500のつもりでいると良いです。

ガイドには、「シェアタクシーは敷居が高い」と書いてあるが、そんなことはありません。バックパッカーを経験した人であれば、普通に交渉できると思います。このシェアタクシーは、旧中央バスターミナル(現在は名前が変わっているので注意)から出発しています。フロントガラスにパドゥム行きであることが明示されていますし、その辺を歩いているおじちゃんに声をかければ探し出してくれます。

仮に見つからないとしても(もしくは運転手が何処かに行っていていないという場合でも)、ゲストハウスでお願いすれば、探し出してくれます。こういった僻地では、自分で探すよりもゲストハウスなどで聞いてみる方が手っ取り早かったりしますね。ぼくは泊まったゲストハウスで探し出してもらいました。

 

カルギルからパドゥムに向かう途中、ヌン、クンという高峰や、氷河が見られます。ヌンやクンほど美しい山はない、とカルギルの人が言っていました。また、ダラン・ドゥルン氷河はインド最大規模らしく、S字を描く非常に壮大なものです。

スルの谷はガイドブックにもさらりとしか触れられていませんが、非常に美しいところです。同じく旅をしていた人も、スルの評価がなぜされてい無いのか非常に不思議に思っていました。スルの谷に泊まってヌン、クンをゆっくりと眺めるのも良いですね。それ以外の山々も峻厳という言葉がふさわしい、美しい景色です。野生のマーモットもパドゥムに向かう途中にあちこちで見れます。

 


 

ザンスカールに何があるの?と言われると、非常に答えづらいです。ゴンパ以外に何もないからです。気候は厳しいし、食べ物だって十分とは言えません。宿のシャワーは水だし、そもそも町自体がすごく小さいです。

それでもザンスカールが魅力的なのは、ただただ広大で厳しい土地なのに、そこで自分たちなりの人生を送っている人に出会えるからだと思います。ザンスカールのような土地に行くと、人間ってなんなんだろう?人生ってなんだろう?と考えずに入られません。なかなかしんどい旅でしたが、やっぱり行ってよかったと感じています。

 

雨のち晴れ。明日こそきっと晴れるよね。


ラダック:インドのチベット、素朴で優しい祈りの地


「こんにちは」も「ありがとう」も「ジュレー!」。

インドの中のチベット、チベットよりもチベットらしい地ラダック。中心地レーは観光地化が進んでいますが、一歩外に出れば、まだまだ素朴な人々と雄大な自然が残っています。日本よりもずっと青い空の下、チベットの優しさに触れる旅に出ましょう。

 ラダックって?


インド・カシミール地方、平均標高が3500mを超える高地にあるラダック。

デリーから飛行機で1時間、乾燥し、尖った山々を越えていくと、レーにたどり着きます。パキスタンとの国境未確定地域を含むジャンムー・カシミール地方に属するため、危険と思われがちですが、ラダックに限れば安全と言っても良いでしょう。外務省の渡航安全情報を見ても、インド内の他の地域と比べて安全であることがわかります。

 

インドといえばヒンドゥー教のイメージですが、ラダックの宗教はチベット仏教です。中国のラサを中心とする中央チベットでは、独自の文化が失われてしまったと言われるのに比べ、ラダックでは昔からの信仰がそのままの形で残っているそうです。これがチベットよりもチベットらしい地域と呼ばれる所以でしょう。この地に生きる人々は、ラダック語を操り、ラダックの伝統を守り続けています。

 

ラダックには、レーを中心に、数多くの観光名所が存在します。上下ラダック、パンゴン・ツォ、ツォ・モリリ、ヌブラ渓谷、花の民ドクパが住むダー・ハヌー。これらをすべてちゃんと見ようとすると、とても1週間程度では足りません。

自分はザンスカールに行ったので、ラダックでは上下ラダックくらいしか見れませんでした(理由は他にもあるのですが……)。特にパンゴン・ツォは、誰に聞いても「良かった!」と言われる場所ですので、次回は是非行ってみようと考えています。

 

ラダックは見所が多く、非常に魅力的な地域です。しかし注意も必要です。一番は高山病でしょう。3500mといわれる標高ですから、多かれ少なかれ誰もが高山病にかかります。高山病は耳慣れた病気ですのであまり強いと思わないかもしれませんが、実は命の危険性もある大変なものです。到着した日は体を休め、その後も無理をしすぎないように気をつける必要があります。

 チベット寺院、ゴンパ。

チベット仏教が根付くこの地域には、お寺がいっぱいです。ラダックを訪れた人の誰もが、一度はゴンパ巡りを行います。

上下ラダックの有名どころといえば、ティクセ、ヘミス、アルチ、ラマユルなどになります。こういったお寺巡りが好きな人も多いようです。自分は建造物そのものにはあまり興味がないのですが、それぞれのお寺に入るお坊さんに声をかけてもらったり、一緒にお茶を飲んだりするのはすごく楽しかったです。「Tea?」とたくさんの人から声をかけられました。

ここでは、ぼくが訪れたゴンパの中でも特に印象深かったものについてご紹介します。

①ティクセゴンパ

ゴンパ関係で特に記憶に残ったのは、ティクセゴンパで僧侶の祈りに立ち会ったことです。11時から始まってなんと13時30分まで、祈りは2時間半も続きました。50人以上いるでしょうか。小さな子供の僧から、もう80歳は超えていそうな大僧侶まで、一斉にお経を唱える姿は圧巻です。それほど広くないお堂全体が震えているようです。

このときが、自分がこれまで生きてきた中で一番「宗教ってすごいかも」と思った瞬間です。形だけ宗教っぽいことしている人たちとはレベルが違います。2時間半の祈りを毎日するだなんて、本気でなければなかなかできません。

②ラマユルゴンパ

ラマユルゴンパは、様々な写真家が訪れる場所です。ラダック地域を訪れた写真家は必ずと言って良いほどラマユルゴンパと「月世界」と呼ばれる特殊地形をセットで収めていきます。ガイドブックには載っていませんが、ラマユルからカルギル方面に坂を登っていくと、ビューポイントが存在します。この地は、ラダックの代表的風景なのです。ぼくが好きな竹沢うるまさんも写真集にここの風景を収めていますね。

また、近くにはホームステイ受入れを行っている家やゲストハウスが複数あるので、できれば1泊したいところです。ぼくが泊まったゲストハウスは夕食込みで、お母さんがダルカレーを作ってくれました。こちらのご飯は味気ないのですが、なんだか地元感が出ていて楽しめました。

ちなみに、ラマユルからカルギル方面へ行くために、路上でレー方面から来るバスを、ヒッチハイク的に拾えます。

③バスゴゴンパ

ジープのチャーターでもしない限り、なかなか訪れないと言われるバスゴゴンパも、お気に入りの一つ。他のゴンパに比べれば朽ちていて、しかも現在はお坊さん2人が交代で管理しているだけ。現在活動しているゴンパというわけではないようです。

しかし、そのぶん静かで、落ち着いて見学することができます。ぼくは現地で知り合った日本人と一緒に行動していましたが、このバスゴゴンパだけで1時間30分くらいは時間を使ったのではないでしょうか。バスゴゴンパからの景色は、絶景そのもの。朽ちかけたゴンパと乾いた山肌、光を受けてキラキラ光る田園を1枚の写真に収めることができます。

④行かずに後悔、サスポール

私が非常に心残りだったこと、それはアルチに1泊しなかったことです。アルチ近くのサスポール村には「サスポール洞窟」と呼ばれる有名な洞窟があるそうで、チベットの壁画が数多く残されているとのこと。イメージとしては敦煌の莫高窟のようなものでしょう。

私が旅の途中で出会った人々は、アルチがラダックでベストと言っていました。また、その周辺にある村の人々も非常に優しく、心安らぐところだそうです。アルチゴンパだけを見てラマユルに行ってしまったのは、失敗でした。当時ぼくはサスポールのことを知らなかったので、仕方がないといえば仕方がないのですが……。ラダックに来たら必ず訪れるべき場所のようです。

 レーの町歩き。 〜お土産・ゲストハウス・レストランなど〜

レーには数多くのゲストハウス、お土産屋さんがあります。

ゲストハウスは価格・設備が千差万別ですので、自分に合うゲストハウスを見つけましょう。旅行社にはチャンスパと呼ばれる地域のゲストハウスが人気のようです。もちろん価格交渉も忘れずに。夏場は観光客が押し寄せるようで、どこのゲストハウスもいっぱいになると聞きました。自分が訪れた9月は、全くそんなことはありませんでした。

 

お土産物には注意が必要です。お店によって値段がかなり違う上、偽物を売っている店も多いとか。自分で信頼できそうな店を見つけましょう。ちなみに自分は、「今買って!」と言わない店で買うことにしています。また、日本でパシュミナや絨毯等、現地で買いたいと考えているものについて、勉強してから渡航するのも一つの手段です。

お勧めのレストランは、「MOON LAND RESTAURANT」。オリヴィエ・フェルミの写真屋さん近くにあります。非常に安く、しかもここのトゥクパとタントゥクが一番美味しかったです。地元の人たちがたくさん来ていましたので、クオリティは確かということでしょう。

【ガイドブックなどによる情報収集について】

ラダック地域のガイドブックは数少ないです。山本高樹さんの「ラダックザンスカール トラベルガイド」や旅行人の「ラダック」から情報を得るのが良いです。ラダックを旅する人は大概、山本さんの本を持参しています。ただし、山本さんの本は出版が2012年ですから、一部情報が古くなっている部分があります。特に交通機関に関しては、現地での情報収集が欠かせません。

また、秘境専門で経営している旅行会社のホームページも参考になります。ラダックは標高が高い地域にあるため、高山病のことなども考慮しながら旅程を決める必要があります。旅行社がどういったプランを組んでいるか、一度確認してみるのが良いでしょう。

 


 

ラダックは非常に優しい土地です。毎年のように来ているリピーターが多いというのもうなずけます。

それでも単に優しいというだけじゃなくて、景色は綺麗だし、チベット仏教などの見所はたくさんあります。観光地化されていますから、危険度も他の地域に比べれば小さいと思います。普通の海外旅行に物足りなさを感じている人には強くお薦めできる地域です。

雨のち晴れ。青空のもと、胸いっぱいに空気を吸おう!(薄いけど)