ウイグル撮影の反省 ー事前準備・待つこと・覚悟を決めることー


ウイグル撮影の旅もあっという間に終わり、しんどい日常に戻ってきて早2週間。

今回はアクシデントも多かったですが、撮影に集中して取り組んだことは確かですので、ここに反省しつつ次に生かしていくための備忘録を残しておこうと思います。

絶対に欲しいカットをいくつか決めておく

今回の旅で一番大きかったのは、日本にいる時から「絶対に欲しいカット・構図はこういうもの」という事前準備を行った点でしょう。

これまでの自分は、画面右寄りに被写体がある形で撮ることが多く、構図が単調になりがちでした。これを意識的に変えるために、特に主題が左よりに位置する写真、リフレクション、額縁構図と集中線構図のものは確実に撮ってこようと心に決めていました。

 

毎晩自分の写真をチェックすることで、現時点で撮れているものと撮れていないものが明確になり、次の日にはまた目的意識を持つことができました。

撮影準備は、風景写真では定番ですが、スナップで周到な準備という話はなかなか聞きません。偶然の出会いが、思いもしなかったような名場面を捉えるチャンスになることも少なくないのは確かです。しかし、事前に準備をしていけば、特に30枚などの組写真を作成するときには非常にやりやすくなると感じました。

 

粘ることで生まれる写真

もう一つは、とにかく粘ったこと。旅行それ自体を楽しむことが目的だった頃は、とにかく一歩でもたくさん歩みを進めることに集中していました。今までに見たことのないような光景に出会う確率が上がるからです。そして、頑張って歩き回ることによって、結果として良い写真が撮れることもありました。

それに対し今回は、本当に気になる場所があったら、そこで1時間くらい粘って撮り続けたり、同じ場所に次の日も改めて訪れるということをしました。普通のサムサ屋さんとかでです。

 

本気でジャーナリストをやっている人からしたら極めて当然のことかもしれません。また、風景写真などではアマチュアでも当然のように待って待って待ちまくるということをします。今回、スナップで同じことをして見ることによって、以前までは偶然良い写真が撮れている感じだったのが、撮るべくして撮ったと言えるくらいに変化したのではないかと感じます。

 

例えば、メインの被写体は決まっている中で、そのメインを最も引き立たせようと思ったら、最高の副題が必要になります。最高の副題を考えたとき、その色彩バランスや、動きの有無などを考慮することになるでしょう。また、最初の一枚はカメラ目線で撮影するとしても、一定程度の時間をかけることによって、日常の自然な表情を撮れる可能性も大幅に上がったと感じます。

「待つこと」でこれらを確実に抑えることにより、「良い」と思える写真を撮れる確率はグッと上がります。今回、それを実体験として蓄積できたことは、今後の撮影に大いに生きることになっていくことでしょう。

危険も犯した今回の撮影

誰にでも勧められることではありません。でもぼくは今回、危ない橋を渡りながら撮影し続けました。他の人だったら怖くて撮れないようなものを、危険を覚悟で撮影しました。危険を冒すことは他の誰かに迷惑をかける可能性があるわけですが、そのリスクを負ってもなお撮影する覚悟があるかどうかは、非常に重要な要素だと感じます。

覚悟を決めた分、撮影できた写真は貴重で良いものに仕上がっています。日本に帰ってきた今、ウイグルでの写真を見返すと、やはりウイグルの現状を伝えるためには、必要不可欠なものだったと感じます。

 

海外でスナップ写真を撮るということは、誰かの生活にお邪魔するということです。別の言葉で言い換えれば、誰かの人生に介入することとも言えるでしょう。そんなに思いつめないで楽しく写真を撮れば良いんじゃないの?という考え方もありますが、ぼくは、他人の生活にお邪魔するからには、何をしたいのか自問自答してみることも必要ではないかと考えています。

自分は、ウイグルにしろタシュクルガンにしろ、なかなか伝えられることがない現状について、きちんと記録に残して伝えたいと思っています。まあ、そういう考え方自体、先進国側の傲慢と批判されても仕方がないですが。

 


今回、自分の中ではアクシデントが多かったにもかかわらず頑張った方だと思っています。批判的な反省については、もう少しじっくり考えた上で追記したいと思います。

雨のち晴れ。一歩一歩、前に進もう。


タシュクルガンでパミールの息吹を。タジク族が住む国境の町。


【重要】5月4日より、カシュガルからタシュクルガンへの個人旅行が禁止されました。ツアー会社に登録すれば行けるようです。

→7月末日現在、パスポートのチェックはしっかりと行われるわけではなく、特段問題なくタシュクルガンまで行けたという話が出ております(ただしパキスタンビザ保有者)。詳しくはコメント欄をご覧ください。

 

カラコルムへの入り口、タシュクルガン(塔什库尔干)。中国でもウイグルでもなく、パキスタンでもない。パミール高原に生きるタジク族の小さな町。山と草原、馬を繰る男と刺繍する女、ロバを引く老人。観光名所はほとんどないけど、こんなに暖かくて面白い土地はありません。

そして、中国からパキスタンのフンザに抜けるためには、このタシュクルガンのバスターミナルからバスで峠越えすることになります。この国境の町は、カラコルムハイウェーの入り口でもあります。

タシュクルガンってどこ?どう行く?

中国側からパキスタン・フンザを目指すなら、まずは中国最西端、新疆ウイグル自治区のカシュガルに行く必要があります。そして、カシュガルからフンザへ向かい途中、国境越えの際に前泊する町がタシュクルガンです。つまり、フンザに行く順序としては、カシュガルからタシュクルガンへ(1泊)、そしてカラコルム峠越え、ということになります。

 

カシュガルからタシュクルガンに向かう途中には、カシュガル郊外の見所として名高いカラクリ湖があります。高所にある湖なので、水は青く、後方に山々を望む清々しい景観を楽しむことができます。

自分の場合、カシュガル郊外からシェアタクシーでこの町に行くことにしました。現地の漢民族やウイグル族、タジク族と相乗りで、料金は一人120元(ウイグル族の車の方が安かった。漢民族の車は少し高い)、4人揃うと出発という形式です。所要時間ははっきりとは言えません。運転手の気分次第だからです。6時間くらいは目安としてみておくと良いと思います。運が良ければ4時間くらいです。3度シェアタクシーを使いましたが、2時間程度は差が出ました。

このシェアタクシー、街の中心部からは少し離れた場所で待機しています。「 塔什库尔干亦事处」とメモを書いて見せれば大抵の人がわかってくれます。エイティガール寺院の近くからタクシーに乗って10元もかかりません。ただし、2017年5月現在、タシュクルガンへの個人旅行ができなくなっていますので、シェアタクシーで向かうこの方法は使えなくなっています。喀什老城青年旅舎でツアーを使うなりカラクリ湖でリリースしてもらうなりの手段を相談してください。

 

また、カシュガルのバスターミナルからタシュクルガン行きのバスも出ているそうです。パキスタンのスストに行くバスも出ていると聞いていますが、自分では確認していません。

タジク族とともに

 小さな小さな国境の町。先に書いた通り、ここは単に国境の町というだけではなく、暖かく素敵な町です。

顔立ちも出で立ちも独特のタジクスタイルの子ども達が、陽が昇ったばかりの肌寒い通りを学校に向かいます。秋になると、街全体にピンク色のコスモスが咲き乱れ、女性たちのタジク帽子と鮮やかなコントラストを見せます。パミールの山々や湿原もとても美しいです。冬は冬で、荒涼とした大地と雪が美しい風景を見せてくれます。

 

この町、素晴らしいところはいろいろありますが、やっぱり一番は人です。気さくで優しくて、ゲストをもてなそうという気持ちが伝わってきます。植村直己(超有名な登山家)さんの本にも書いてありますが、いわゆる僻地っぽいところの人々の特徴なのか、「うちに来い」と言ってくれますし、行くとナンやチャイでもてなしてくれます。

ただの外国人旅行者に対して、ためらいなくもてなす心意気は、ぼくらも見習う必要があると思いました。ぼくは3度訪れたわけですが、どの訪問時も1度は民家にお邪魔しています。

村の少年たち
村の少年たち

女性のタジク帽子は、ものすごくきれいです。刺繍のみのものとビーズを貼り付けたものがありますが、特にビーズを貼り付けたものは、太陽の光に照らされるとキラキラ光ります!

ぼくの印象では、おばあちゃんは刺繍のみのもの、若い子はビーズ付きのものをかぶっている感じでした。帽子の高さもものによって微妙に違い、「こういう微妙な差でおしゃれするんだろうなー」とか思って感心。

 

そんなわけでお土産に是非とも買って帰りたいと思ったのですが、この女性用タジク帽子、意外と高いです。1000円くらいで買えると思っていたので、面食らいました。質がいまいちなものだと150元くらいで買えますが、良いものだと300元もします。日本円にしたら5000円以上。想定していた金額の5倍です。男性用の帽子も同様で、羊をきちんと使った上質のものだと、450元。値切っても380までしか下がりませんでした。

数件店を周りましたが、どこもそれ以上は下がりません。ゲストハウスのオーナーに聞いても、やはりそれくらいはするとの答え。ウイグル帽子の場合、安いものなら30元とかで買えるので、その10倍です。

結局「どうしても欲しい!」と思って買ってしまいましたけどね。これだけ高いとなると、相当物好きな旅行者でなければ買わないでしょうし、その分レアなはずです。

 山・平原・空の全てが美しい町

この土地に来て、美しい風景を語らないわけにはいきません。「ため息の出るような美しさとはこのことか……」朝日を見ながらそう思いました。

ずっと続く平原にポツポツと立つゲル、裾野からすっとそびえ立つ山々、そこから徐々に顔を出す太陽。平原の水路に太陽の光が眩しげに反射し、山肌はオレンジに染まります。たった30分程度で全てが色を変え、まるで全く違う景色を見ているかのよう。もちろん、どの景色もそれぞれ美しいです。

タシュクルガンが本で紹介されることはあまりないのですが(長倉洋海さんの写真集には出てきます)、この地域はぼくの中で世界の絶景といえるものでした。おそらくアフガンのワハーン回廊などもにたような雰囲気なのだろう、と想像しています。

 

タシュクルガンの中心部からカシュガル側に少しもどると、ひたすら平原が広がっています。もちろん遠くに山が見えます。羊が放牧され、本当にのどかです(たまに警察がいて緊張しますが)。細い道には数十分に1台程度しか車が通りません。何もありませんが、風が気持ち良いです。それほど長期な旅行なわけでもないのに、観光地ではないところで「風に吹かれて気持ち良いなー」って言えるだなんて、ものすごい贅沢ですね!

最近は漢民族向けの観光地化が進んでいるようですので、素朴な雰囲気を味わうのであれば、可能な限り早く訪れた方が良いと思います。

 

タシュクルガン唯一の観光地といえば石斗城。ぼくは遺跡にはそれほど惹かれないのですが、ここから見る朝日もなかなか良いです。遺跡と山をいれて広角の写真を撮ると、いかにもな感じでニンマリできます。

朝日に照らされる石斗城
朝日に照らされる石斗城
町の後方に広がる湿原。朝は馬に乗って走る男の姿も。
町の後方に広がる湿原。朝は馬に乗って走る男の姿も。

 宿泊事情について

自分は交通賓館と功徳賓館、そして北緯38度青年旅舎の3か所に泊まったことがあります。

ひとりなら青年旅舎のドミに止まれば安上がりですが、2人以上なら他でも別に高くありません。カシュガルから同じタクシーに乗ってきたパキスタン人(住んでるのはウルムチ)と一緒に交通賓館に泊まったこともあります。ちなみに、交通賓館から50mほどの距離にパキスタンのカレー屋さんがあって、とても美味しいです。

 

交通賓館はチェーン展開しているホテルですから、ありがちなビジネスホテルです。中国国内を旅行した人であれば、一度は目にしたことがあるでしょう。

功徳賓館も同じです。受付の人とかの感じがとてもよく、近くの食堂を教えてくれたり、祭りを見てからカシュガルに帰るにはどうしたらよいか一緒に考えてあれこれ案を提示してくれたりしました。タクシーのおっちゃんに頼んで、祭りを十分に見てからカシュガルに向かうように言ってくれたのもここの人です。暖房、WiFi、ホットシャワー完備。冬であれば1泊80元で個室に泊まれます。全く不満はありませんでした。

北緯は今までにぼくが泊まった中では変わった雰囲気のところで、ドミの他に雑魚寝用の部屋もありました。もちろんぼくは雑魚寝部屋に宿泊。街の中心から少し外れているからか、あまり人はいませんでしたが、なかなか快適に過ごせます。個人的にはどこも同じようなビジネスホテルより、いろんな旅行者の旅の跡が見えるゲストハウスの方が好きです。

ここも例に漏れず、いろんな人が旅行を楽しんでいった跡でいっぱい。ちなみに、ここでは自転車が借りられます(有料だけど安い)。ちょっと遠出してみたいときには便利です。

 


雨のち晴れ、明日はきっと晴れるよね。

 

※ カレー屋のオーナーがめちゃ格好良い!英語はペラペラ、その他にも数ヶ国語を話せるらしく、知性があふれる!「お前、学生なんだから腹減ってるだろ?好きなだけ食ってけよ。俺も昔は腹すかせてたもんさ……。」なんて言うあたり、男気ありすぎです。冬はやってませんでした。

※2 バスターミナルの近くにも青年旅舎があります(K2)が、そっちはイマイチらしいです。冬は閉鎖しています。途中一緒に旅をしていた中国人が言ってました。

 

フンザへの行き方もまとめています。詳しくはこちら↓

フンザへの行き方【まとめ】〜中国・ウイグルからパミールを越えて〜

2016の年末年始もタシュクルガンで過ごしました。その時の一部始終はこちら↓

3度目の新疆!タシュクルガンで写真を撮りまくる。

個人でのタシュクルガン訪問はツアー以外難しくなりました。

いざタシュクルガンへ!?最悪の事態が発生。

(2016.11.13、2017.1.14、5.14、6.13リライト)