文化財保護法とは?ゆるく理解しよう!


先日、文化財ってそもそも何?ということについて、大きく6つの類型があることと、それぞれがどのようなものなのかを簡単に説明しました。

そして、文化財というものが文化財保護法によって定められていること、その法律が保存と活用についてちゃんとやろうとしていることについて簡単に触れました。

今回は、その文化財保護法について、どんな方法で保存と活用を図ろうとしているのかをざっくり解説します。

文化財保護法成立の経緯

文化財保護法は、戦後すぐにできた法律です。現在の日本では、私人にはっきりとした規制を課す法律のほとんどが政府が提出したものです。要すると各省庁で案を作ったものですね。

これに対し、文化財保護法は議法(議員立法)です。つまり国会議員が「こうしよう!」と言って案を出して議論し、成立させた法律ということです。

 

戦後間もない時期に、法隆寺の金堂壁画が燃えて無くなってしまったことを契機に文化財保護の機運が高ま理、制定の運びになったようです。

戦前、国の文化財は全て「国宝」という名称だったのですが、GHQから「国宝が多すぎて国民の関心が散漫になるのでは?」「本当に大切なものについて重点的な保護を図った方がよいのでは?」といった話が出たそうです。そんなこんなで、有形文化財は制定の際に「国宝」と「重要文化財」の二段階に別れることになりました。

この文化財類型に関する区分は今現在もなくならずに続いています。ぼくたちの多くが人生で触れたであろうこの2つの名称については、すっかり当然のことのごとく生活に馴染んでいますね。

どうやって文化財を保護している?

日本の文化財制度では、個人や宗教法人などが文化財の所有者であることが多いです。ここでは、分かりやすいように「個人が所有している重要文化財もしくは国宝の神社(建造物)」を例に考えてみます。

 

文化財保護法における国指定文化財に指定されると、規制がかかります。簡単にいうと、勝手に修理するなどの現状変更ができなくなるんです。勝手にできないということで、実際に現状変更を行うには文化庁長官の許可が必要となります。

これには、貴重な国民的財産が失われてしまうことを防ぐ目的があります。立派な神社が、修理の名目で「知らないあいだに元の神社とは似ても似つかぬ形になっててしまった!」なんてことになったら困りますからね。

他方、いざ修理を行う場合には、国から補助金が出ます。原則、修理費用の50パーセント。文化財所有者が経済的に苦しい場合には、最大で85パーセントまで国が補助します。

なお、この修理の際の補助金については、国宝でも重要文化財でも変わりません。国宝と重要文化財では、文化庁長官が「修理してください」と強制的に命令を出せるかどうかの違いしかありません。あとは規制も補助金も同じです。

 

このように、「修理を勝手に行えないけど、いざ修理を行うときには国の補助金が出る」というのが文化財保存の基本的な枠組みです。あとは所有者が第三者に売りたいときには国に届けないといけないとか、売ろうとするときには国が優先的に買い取れる仕組みがあったりします。

あとは税制面での優遇もなされています。重要文化財や国宝の固定資産税は免除されていますし、相続税についても優遇されています。公平性が重視される税の世界においても、個人の財産に規制がかかっていることも踏まえて、優遇措置が講じられているということです。

 

私有財産制度をとっている日本において、このように個人の所有物について「勝手に○○したらダメです!」なんていうのは、結構強い規制だったりします。

以前、他の国の人に「日本は個人が文化財を持っていることが多くて、それに対して国が規制をかけたり補助をかけたりして保護しているんですよ」とお話ししたところ、すごく驚かれました。その国では、特に重要な文化財は全て国が保有しているということでした。

 


以上、文化財保護法について、イメージのレベルで本当にざっくりと解説しました。百条を優に超える数の条文がある法律ですから、先に挙げた規制と補助の関係以外にもいろんなことが定められています。前回の記事で書いた文化財の類型などもその例ですね。

 

前回と合わせると、こんな風にまとめられるでしょうか。

「文化財は大きく6つの類型がある。有形(建造物・美術工芸品)、無形(芸能・工芸技術)、民俗、記念物(史跡・名勝・天然記念物)、文化的景観、重要伝統的建造物群保存地区であり、文化財保護法でその類型や指定基準が定められている。

文化財保護法は、国の宝たる文化財を適切に保存・継承し、かつ活用を図るための法律だ。法律は、規制と補助等によって文化財の保存・活用を図るように設計されている。例えば、文化財の所有者が文化庁長官の許可を得ずに勝手に現状変更をすることはできない。他方、いざ修理を行う際には国から補助金を受け取れる仕組みになるなどしている。」

 

簡単ですが、文化財保護法についてざっくりとイメージを掴んでいただけたでしょうか。文化財に興味がある方の学習の手助けになれたらすごく嬉しいです。

雨のち晴れ、きっと明日は晴れるよね!


文化財って何?分類ごとにざっくり理解しよう!


みなさま、文化財ってなんだか知ってますか?

お寺?仏像?首里城とかも文化財??ぼくはそれなりに文化財について勉強しているのですが、周りの人と話していると、現在の制度上の文化財とイメージとしての文化財に大きな乖離があります。

説明すると「へー!」と言ってもらえることも多いので、今日は「そもそも文化財とはなんぞや?」というところを説明させてもらおうと思います!

文化財って何?

文化財の種類は大きく6つ。有形文化財、無形文化財、民俗文化財、記念物、文化的景観、そして重要伝統的建造物群です。

これらは「文化財保護法」という法律で定められています。法律の目的は、文化財を保存・活用することです。

え、そんなに種類があったの?そして記念物って何よ?文化的景観とか聞いたことないよ?って方も多いのではないでしょうか。地元にある文化財についてはなんとなく知っていても、地元にない種類の文化財については、身近に触れる機会がないので知らなくても仕方がありません。

 

そして、これら6つの分野で特に素晴らしいものや歴史上意義あるものが、国によって「指定」あるいは「選定」されて「国指定文化財」となります。簡単にいうと「古くてすごくて貴重なもの」ってところです。重要文化財とか国宝、それに特別天然記念物なんかが有名ですね。個人や地方自治体からの推薦は受け付けておらず、国が独自に価値を調査し、重要と分かったものを指定することになります。

 

都道府県や市町村もそれぞれ指定を行っており、それらは「県指定重要文化財」みたいな形になります。注意する必要があるのは、国の文化財と県の文化財は直接的な繋がりがないってことです。つまり県の文化財に対して国はノータッチです。修理の補助金とかも「県指定」に対する国からの補助はありません。

文化財の6類型について学ぼう!!

文化財の種類は先ほど書いたように6つ。有形、無形、民俗、記念物、文化的景観、重要伝統的建造物群です。みなさんがよく知っていそうな文化財から、あまり馴染みがなさそうな文化財まで、順にご説明します。

厳密性よりもざっくりとしたイメージを掴んでもらうことを目的としていますので、その点ご了承くださいませ。

 

★有形文化財

有形文化財が、多くの人がイメージする文化財に最も近いものです。有形文化財は2つに分類されます。寺社などの「建造物」と仏像や屏風などの「美術工芸品」です。そして、これらのうち特に重要なものを国が指定し、よく聞く「重要文化財」や「国宝」となるわけです。

 

では重要文化財と国宝の違いはなんでしょう?一言で言うと凄さ・貴重さの違いです。あとで説明する記念物と有形文化財(建造物と美術工芸品)だけは、2段階に価値づけのランクをつけているんです。

平成29年8月現在、国宝は1,101、重要文化財は13,128あります。重要文化財は国宝の10倍以上。言い換えれば、国宝は重要文化財の10分の1しかないことになります。国宝がいかに貴重かが分かります。ちなみに建造物に限ると、国宝が223、重要文化財が2,274棟です。

 

★無形文化財

え、形がない文化財なんてあるの?と思われる方もいるでしょう。あります、あるんです。例えば能楽(お能)、歌舞伎、雅楽。それに鍛金や染色なんかの工芸技術も無形文化財になります。

 

よくニュースで聞く「人間国宝」というのは、この無形文化財のわざを持っていると認定された「個人」のことです。正式には「重要無形文化財各個認定保持者」と言います。

この人間国宝は116人。「人間国宝」になると、後継者育成等のための費用として、国から年間200万円の補助金が出ます。この予算の都合上、116人が人間国宝の上限となっています。しかも芸能関係と工芸技術関係でだいたい60人ずつに分かれています。想像以上に少なくありませんか?

 

そもそもなぜ人間を指定するのか?というところですが、こういった無形のものは人間がいないと始まらないからだ、と言えるでしょう。

能楽にしても雅楽にしても、工芸技術にしても、行うのは人間ですよね?ですから伝統の技術を継承している人(でちゃんと次の世代を育ててる人←ここ重要)を指定するわけです。

 

★民俗文化財

お祭りとか、それに使ってた道具とか、日本の風俗慣習を知るうえで欠かせないものです。鵜飼やなまはげも民俗文化財に入ります。他の文化財が「芸術上」価値があることなんかも要素に入っているわけですが、民俗はそういった芸術とか関係ないです。ゴーマイオウンウェー。

民俗文化財は有形と無形に分かれます。お祭りそれ自体は無形、山車は有形です。昨年はユネスコの無形文化遺産に「山・鉾・屋台行事」が記載されました。

 

★記念物

記念物はさらに3つに細分化されます。史跡、名勝、天然記念物です。これら3つもランクづけされていて、特に重要だったりすごいものは「特別史跡」「特別名勝」「特別天然記念物」に指定されます。では3つをそれぞれ簡単に説明します。

 

史跡とは、城跡や平城京跡みたいな歴史の舞台となった場所のことです。

よくお城とかに観光に行くと「史跡」の文字を目にすると思いますが、これは「ここ、文化財っすよ」ということです。お城の石垣なんかも史跡として指定されています。藤原宮跡、とか古墳をはじめとする遺跡系も史跡です。青森県の三内丸山遺跡とか。

 

名勝とは、綺麗な景色です。綺麗な景色が文化財なの!?と思うかもしれません。少なくともぼくは最初驚きました。有名どころだと松島とか天橋立とかですね。他にはすごく有名な庭園とか。なんだかすごく不思議な類型です。

 

天然記念物といえば、トキ!とか奈良の鹿!とかアマミノクロウサギ!ですよね。最も天然記念物といってイメージされるのが動物でしょう。

あとは貴重な高山植物なんかも天然記念物。意外なのは、地質鉱物も天然記念物に入るということでしょう。鍾乳洞や地層も文化財なんですね。

 

★文化的景観

さて、さらにマイナー(失礼!)な類型です。

文化財保護法では「地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された景観地で我が国民の生活又は生業の理解のため欠くことのできないもの(第二条第一項第五号)」とされています。

景観地ということは名勝っぽいです。国民の生活又は生業の理解のために欠かせないというのは民俗っぽいです。ということで、イメージとしては、美しい里山や棚田です。日本の原風景的な。

有形、無形、民俗、記念物については、国が一方的に「これが重要!」といって指定するのに、文化的景観と次に紹介する重要伝統的建造物群保存地区は、市町村が国に推薦する形になっています。

 

★重要伝統的建造物群保存地区

宿場町や城下町、それに門前町などの「街並み」です。時代劇に出てきそうな街並みも文化財として選定されています。観光地としても人気があり、近くにお城など他の文化財も存在することが多いです。

ぼくも先日岐阜県の郡上に行ってきました。お城(史跡)があって街並み(重要伝統的建造物群保存地区)があって郡上踊り(重要無形民俗文化財)があって、と文化財盛りだくさんでした。

最近は外国人観光客が増えていることもあり、今後より一層注目を集めることでしょう。

 


 

以上、文化財6つの類型について簡単に説明してみました。分かりやすさ重視でかなりざっくりになりましたが、ご理解いただけましたでしょうか。

 

簡単におさらいです。

「文化財保護法」によって文化財の類型や保存・活用すべきことが定められていて、これまでに書かせていただいた有形、無形、民俗、記念物、文化的景観、重要伝統的建造物群保存地区をしっかり守って活用して次世代に継承していきましょうね!……以上。

 

雨のち晴れ、きっと明日は晴れるよね!