タシュクルガンでパミールの息吹を。タジク族が住む国境の町。


【重要】5月4日より、カシュガルからタシュクルガンへの個人旅行が禁止されました。ツアー会社に登録すれば行けるようです。

→7月末日現在、パスポートのチェックはしっかりと行われるわけではなく、特段問題なくタシュクルガンまで行けたという話が出ております(ただしパキスタンビザ保有者)。詳しくはコメント欄をご覧ください。

 

カラコルムへの入り口、タシュクルガン(塔什库尔干)。中国でもウイグルでもなく、パキスタンでもない。パミール高原に生きるタジク族の小さな町。山と草原、馬を繰る男と刺繍する女、ロバを引く老人。観光名所はほとんどないけど、こんなに暖かくて面白い土地はありません。

そして、中国からパキスタンのフンザに抜けるためには、このタシュクルガンのバスターミナルからバスで峠越えすることになります。この国境の町は、カラコルムハイウェーの入り口でもあります。

タシュクルガンってどこ?どう行く?

中国側からパキスタン・フンザを目指すなら、まずは中国最西端、新疆ウイグル自治区のカシュガルに行く必要があります。そして、カシュガルからフンザへ向かい途中、国境越えの際に前泊する町がタシュクルガンです。つまり、フンザに行く順序としては、カシュガルからタシュクルガンへ(1泊)、そしてカラコルム峠越え、ということになります。

 

カシュガルからタシュクルガンに向かう途中には、カシュガル郊外の見所として名高いカラクリ湖があります。高所にある湖なので、水は青く、後方に山々を望む清々しい景観を楽しむことができます。

自分の場合、カシュガル郊外からシェアタクシーでこの町に行くことにしました。現地の漢民族やウイグル族、タジク族と相乗りで、料金は一人120元(ウイグル族の車の方が安かった。漢民族の車は少し高い)、4人揃うと出発という形式です。所要時間ははっきりとは言えません。運転手の気分次第だからです。6時間くらいは目安としてみておくと良いと思います。運が良ければ4時間くらいです。3度シェアタクシーを使いましたが、2時間程度は差が出ました。

このシェアタクシー、街の中心部からは少し離れた場所で待機しています。「 塔什库尔干亦事处」とメモを書いて見せれば大抵の人がわかってくれます。エイティガール寺院の近くからタクシーに乗って10元もかかりません。ただし、2017年5月現在、タシュクルガンへの個人旅行ができなくなっていますので、シェアタクシーで向かうこの方法は使えなくなっています。喀什老城青年旅舎でツアーを使うなりカラクリ湖でリリースしてもらうなりの手段を相談してください。

 

また、カシュガルのバスターミナルからタシュクルガン行きのバスも出ているそうです。パキスタンのスストに行くバスも出ていると聞いていますが、自分では確認していません。

タジク族とともに

 小さな小さな国境の町。先に書いた通り、ここは単に国境の町というだけではなく、暖かく素敵な町です。

顔立ちも出で立ちも独特のタジクスタイルの子ども達が、陽が昇ったばかりの肌寒い通りを学校に向かいます。秋になると、街全体にピンク色のコスモスが咲き乱れ、女性たちのタジク帽子と鮮やかなコントラストを見せます。パミールの山々や湿原もとても美しいです。冬は冬で、荒涼とした大地と雪が美しい風景を見せてくれます。

 

この町、素晴らしいところはいろいろありますが、やっぱり一番は人です。気さくで優しくて、ゲストをもてなそうという気持ちが伝わってきます。植村直己(超有名な登山家)さんの本にも書いてありますが、いわゆる僻地っぽいところの人々の特徴なのか、「うちに来い」と言ってくれますし、行くとナンやチャイでもてなしてくれます。

ただの外国人旅行者に対して、ためらいなくもてなす心意気は、ぼくらも見習う必要があると思いました。ぼくは3度訪れたわけですが、どの訪問時も1度は民家にお邪魔しています。

村の少年たち
村の少年たち

女性のタジク帽子は、ものすごくきれいです。刺繍のみのものとビーズを貼り付けたものがありますが、特にビーズを貼り付けたものは、太陽の光に照らされるとキラキラ光ります!

ぼくの印象では、おばあちゃんは刺繍のみのもの、若い子はビーズ付きのものをかぶっている感じでした。帽子の高さもものによって微妙に違い、「こういう微妙な差でおしゃれするんだろうなー」とか思って感心。

 

そんなわけでお土産に是非とも買って帰りたいと思ったのですが、この女性用タジク帽子、意外と高いです。1000円くらいで買えると思っていたので、面食らいました。質がいまいちなものだと150元くらいで買えますが、良いものだと300元もします。日本円にしたら5000円以上。想定していた金額の5倍です。男性用の帽子も同様で、羊をきちんと使った上質のものだと、450元。値切っても380までしか下がりませんでした。

数件店を周りましたが、どこもそれ以上は下がりません。ゲストハウスのオーナーに聞いても、やはりそれくらいはするとの答え。ウイグル帽子の場合、安いものなら30元とかで買えるので、その10倍です。

結局「どうしても欲しい!」と思って買ってしまいましたけどね。これだけ高いとなると、相当物好きな旅行者でなければ買わないでしょうし、その分レアなはずです。

 山・平原・空の全てが美しい町

この土地に来て、美しい風景を語らないわけにはいきません。「ため息の出るような美しさとはこのことか……」朝日を見ながらそう思いました。

ずっと続く平原にポツポツと立つゲル、裾野からすっとそびえ立つ山々、そこから徐々に顔を出す太陽。平原の水路に太陽の光が眩しげに反射し、山肌はオレンジに染まります。たった30分程度で全てが色を変え、まるで全く違う景色を見ているかのよう。もちろん、どの景色もそれぞれ美しいです。

タシュクルガンが本で紹介されることはあまりないのですが(長倉洋海さんの写真集には出てきます)、この地域はぼくの中で世界の絶景といえるものでした。おそらくアフガンのワハーン回廊などもにたような雰囲気なのだろう、と想像しています。

 

タシュクルガンの中心部からカシュガル側に少しもどると、ひたすら平原が広がっています。もちろん遠くに山が見えます。羊が放牧され、本当にのどかです(たまに警察がいて緊張しますが)。細い道には数十分に1台程度しか車が通りません。何もありませんが、風が気持ち良いです。それほど長期な旅行なわけでもないのに、観光地ではないところで「風に吹かれて気持ち良いなー」って言えるだなんて、ものすごい贅沢ですね!

最近は漢民族向けの観光地化が進んでいるようですので、素朴な雰囲気を味わうのであれば、可能な限り早く訪れた方が良いと思います。

 

タシュクルガン唯一の観光地といえば石斗城。ぼくは遺跡にはそれほど惹かれないのですが、ここから見る朝日もなかなか良いです。遺跡と山をいれて広角の写真を撮ると、いかにもな感じでニンマリできます。

朝日に照らされる石斗城
朝日に照らされる石斗城
町の後方に広がる湿原。朝は馬に乗って走る男の姿も。
町の後方に広がる湿原。朝は馬に乗って走る男の姿も。

 宿泊事情について

自分は交通賓館と功徳賓館、そして北緯38度青年旅舎の3か所に泊まったことがあります。

ひとりなら青年旅舎のドミに止まれば安上がりですが、2人以上なら他でも別に高くありません。カシュガルから同じタクシーに乗ってきたパキスタン人(住んでるのはウルムチ)と一緒に交通賓館に泊まったこともあります。ちなみに、交通賓館から50mほどの距離にパキスタンのカレー屋さんがあって、とても美味しいです。

 

交通賓館はチェーン展開しているホテルですから、ありがちなビジネスホテルです。中国国内を旅行した人であれば、一度は目にしたことがあるでしょう。

功徳賓館も同じです。受付の人とかの感じがとてもよく、近くの食堂を教えてくれたり、祭りを見てからカシュガルに帰るにはどうしたらよいか一緒に考えてあれこれ案を提示してくれたりしました。タクシーのおっちゃんに頼んで、祭りを十分に見てからカシュガルに向かうように言ってくれたのもここの人です。暖房、WiFi、ホットシャワー完備。冬であれば1泊80元で個室に泊まれます。全く不満はありませんでした。

北緯は今までにぼくが泊まった中では変わった雰囲気のところで、ドミの他に雑魚寝用の部屋もありました。もちろんぼくは雑魚寝部屋に宿泊。街の中心から少し外れているからか、あまり人はいませんでしたが、なかなか快適に過ごせます。個人的にはどこも同じようなビジネスホテルより、いろんな旅行者の旅の跡が見えるゲストハウスの方が好きです。

ここも例に漏れず、いろんな人が旅行を楽しんでいった跡でいっぱい。ちなみに、ここでは自転車が借りられます(有料だけど安い)。ちょっと遠出してみたいときには便利です。

 


雨のち晴れ、明日はきっと晴れるよね。

 

※ カレー屋のオーナーがめちゃ格好良い!英語はペラペラ、その他にも数ヶ国語を話せるらしく、知性があふれる!「お前、学生なんだから腹減ってるだろ?好きなだけ食ってけよ。俺も昔は腹すかせてたもんさ……。」なんて言うあたり、男気ありすぎです。冬はやってませんでした。

※2 バスターミナルの近くにも青年旅舎があります(K2)が、そっちはイマイチらしいです。冬は閉鎖しています。途中一緒に旅をしていた中国人が言ってました。

 

フンザへの行き方もまとめています。詳しくはこちら↓

フンザへの行き方【まとめ】〜中国・ウイグルからパミールを越えて〜

2016の年末年始もタシュクルガンで過ごしました。その時の一部始終はこちら↓

3度目の新疆!タシュクルガンで写真を撮りまくる。

個人でのタシュクルガン訪問はツアー以外難しくなりました。

いざタシュクルガンへ!?最悪の事態が発生。

(2016.11.13、2017.1.14、5.14、6.13リライト)


アチェンガルゴンパ:祈りに人生を捧げる天空の街


チベット圏最大級の寺院の一つ、アチェンガルゴンパ。亜青寺と書き、地元の人は「ヤチン!」と言っています。このアチェンガルゴンパの訪問が今回の東チベット旅行の大きな目的の一つでした。カム地方に来たら、ラルンガルとアチェンガル、それにリタンなんかが定番ですね。

 

今回の旅ではラルンガルが立ち入り禁止になっていたので、このアチェンガルが最大の見所となりました。このアチェンガルはラルンガルに比べて知名度で劣ることもあり、今のところ外国人立ち入り禁止になっていませんが、今後いつそうなってしまうとも限りません。現に、常に公安は監視しているようでした。

行けるところには行けるうちに行っておくのが正解です。実際にラルンガルも5月までは入れたのですから……。

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 いざ、アチェンガルゴンパへ

ガンゼからは乗り合いバンで約3時間。ガンゼのデンゴンパ入り口付近から乗り合いバンが出ています。料金は45元。地元の人たちと同じ料金で乗れます。

ガンゼからアチェンガルゴンパまで行くのにかかる時間ですが、ガイドブックには4時間とか書いてあります。でも、きっと道が良くなったからでしょう、3時間で着きました。あっという間です。尼さんたちと一緒にアチェンまでぶっ飛ばしてもらいましょう。

アチェンまでの道中も絶景の連続。見晴らし台が何箇所もあることからもわかるように、単にぼくたち日本人だけでなく、中国人にとっても美しい景色ということでしょう。お金があれば1台チャーターして所々停まりながら写真を撮りたかったくらいです。

 

アチェンガルゴンパといえば、巨大な島に尼さんだけが集まってすんでいることで有名です。しかもその規模はチベット圏最大級。さらに、その島の対岸には男性だけが住む僧坊群が。男女比は1:3くらいということで、女性の方が圧倒的に多いお寺です。

また、以前は野犬が多いことでも有名だったようです。その数なんと2000匹。しかしぼくが訪れた2016年9月の時点ではほとんど駆除されているようで、たまに野犬を見かけるくらいという程度でした。アチェンガルゴンパ入り口の小屋みたいな場所にも「野犬駆除!」みたいな横断幕が掲げられていました。

 

乗り合いバンから降りると、すぐそばに大きなストゥーパとコルラする人々、そしてその横に亜青賓館というホテルが。一部屋1泊100元〜です。ちょっと高いくせに、WiFiもシャワーもありません……。英語も通じず、トイレはニーハオ式(ウエットティッシュとか持っていくと良いかも)。こればっかりは、自ら秘境ちっくなところを訪れている以上、仕方がないと言えますね。ただし、このホテルに併設されたレストランは安くて美味しかったです。特に野菜スープが疲れた体にしみました。

ちなみに、ぼくが訪れた時はこのホテルしかないと思っていたのですが、どうやらバンが到着するところからだいぶ離れた場所に2件ほど宿があるそうです。そちらはドミトリーもあるようでだいぶ安いとのこと。ご参考まで。

 

 島にひしめく僧坊群。これが宗教都市か!

アチェンガルゴンパといえば、何と言ってもその壮大で美しい風景。亜青賓館や巨大ストゥーパから巨大キラキラ仏像が立つ丘の上に登っていくと、島の全貌を拝むことができます。

いわゆる絶景はかなり多く見ているぼくですが、アチェンの景色は格別でした。単なる風景ではなくて、宗教性を帯びているというか、雰囲気が一種独特なんですね。これは時間をかけ辛い思いをしてまで来る意味があると思えました。また、この場所は夜になると夜景が素晴らしい場所でもあります。せっかく辛い思いをしてくるんですから、是非とも撮影して帰りたい風景です。

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さて、そんな景色が素晴らしいアチェンガルゴンパですが、原則として島の中心部に男性は入れません。島の外周には男性もいますが、中心部は女性だけの空間なんです。

まあ絶対にダメというより、原則としてダメという感じなので、入ろうと思えば入れるようですが。ぼくはいまいちよくわからないままに島の真ん中に迷い込みましたが、「ここは男はダメよー」と言われ(チベット語だからたぶんとしか言えないけど)、そのあとは島の外周をうろついたりしていました。

そして、遠くから見ると素晴らしい風景なのですが、近づいてみるとバラックの集合であることがわかります。川はゴミで汚れていますし、正直美しいとは言い難いです。チベット僧と響く読経、すぐ近くに浮かぶ雲、散らばるゴミと工事現場、積み上がる土砂。なんともアンバランスで不思議な感じ。今の中国や世界を象徴しているようでした。

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島の周辺を散策したら、今度は男性僧坊群へ。こちらはもちろん男が入っていって問題ありません。坂のあちこちにお坊さんの家が立ち並び、上まで登っていくと20歳にならないくらいのお坊さんたちが洗濯をしている風景なんかが見られます。ラルンガルゴンパに行けない現在、こういった風景を見られるのはここアチェンガルゴンパくらいではないでしょうか。

 

 高山病に要注意!めちゃ辛いです。

実は、ぼくはこのアチェンガルで高山病にかかってしまいました。アチェンガルゴンパが位置する場所の標高は約3800m。このとき風邪をひいていてもともと体調が優れなかったことも原因でしょう、あっという間に頭痛と筋肉痛、それに顔の猛烈なむくみに襲われました。

本当は3日間滞在して精力的に回ろうと思っていたのですが、右目が潰れるくらいまでに腫れてきたので、やむなくガンゼに退散したほどです。

 

どうしてもくまなく見たいという思いと体の辛さの狭間で、100m歩いては座り込むということを繰り返しながらお坊さんとコミュニケーションをとったり写真を撮ったりしていました。

高山病にならないためには水を飲みまくることが重要と聞いていたので、相当頑張りましたが、それでもダメでした。最後は命の方が大切です。アチェンガルゴンパは本当に素晴らしい場所ですが、無理しすぎないように気をつけましょう。ぼくはガンゼに戻ったらすぐに顔のむくみもなくなり、普通の状態に戻りました。たった500mしか違わないのに、これだけ体に与える影響は違うものなんですね。

 

 実はある、とっておきのお土産

旅行者向けのものはお土産も何も無いと書きましたが、ここは巡礼地。巡礼者のためのものなら存在します。その一つがこのバッグ。確か15元だったと思います。お坊さんたちってみんな似たような格好をしていますよね。当然のようにみんな臙脂の僧衣をまとっています。

でもみんな同じなんてつまら無い、ファッションにだって興味があるのが人間の心情です。そしてこの心情についてはお坊さんだって同じ。そんなわけで、ぼくたちが観光地に行ってお土産にお守りを買うように、お坊さんたちも「俺は亜青寺に行ったんだ!」というグッズが欲しいんでしょう。そんなわけでおそらくお坊さんが買うためのバッグがこれ。

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まさにアチェンガルゴンパに行った人しか買えないオリジナルグッズ。乗り合いバンが到着する場所の近くにあるショップの一つで発見しました。アチェンのお土産に、是非。

 


 

現代に残された秘境ってすごく少なくなっています。パキスタンのフンザも秘境と呼ばれますが、こちらは外国人観光客向けのゲストハウスやホテルが立ち並んでいます。それに比べても、ここアチェンガルゴンパは本当に秘境と言えるでしょう。外国人向けのホテルは存在せず、お土産なんてものもありません。あくまでもチベット仏教とのための巡礼地なんです。

 

雨のち晴れ。いつかきっと晴れますように。

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